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domoto63

「起きてたんか…。

「起きてたんか

近藤さんと土方さんが来てはった。謝りに,来はった。」

 

 

「そう……。何か言うてた?」

 

 

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あっさりと身を退いてくれた。

三津はほっとしたような,寂しいような,どこかもどかしい気持ちになった。

 

 

「あのね,おばちゃん。みんな悪くないねん。」

 

 

新選組から離れたいと願って甘味屋に逃げ帰ったのに,可笑しな話だと自覚しながらも続けた。

 

 

「確かに怖い目に遭ったけど,私が間抜けやからこうなってもただけで。」

 

 

 

誰も悪くない。そう思う他なかった。

 

 

「分かってる。あの人らを恨んだりせん。でもな,ホンマにあんたが居なくなってしまうかと思った。」

 

 

トキの表情が歪んだ。こんなにも泣き出しそうな顔を,三津は見たことなかった。

 

 

「危険が伴うのも承知の上やった。せやけど,どっかで大丈夫やろ,なんて思っとった。

それが間違いやって思い知らされた。

お願いやから三津,もう目の届かん所に行かんとってっ……!」

 

 

トキは三津の手を強く握った。三津は繋がれた手を優しく握り返した。

 

 

「うん,私はここにおるよ。」

 

 

どうしたら安心してもらえるのか考えて,熱のせいで赤らんだ顔で笑った。

 

 

「こんなに傷だらけになってもて……。」

 

 

トキは目を潤ませて,三津の腕や足を優しくさすった。

 

 

川に投げ込まれた時,川の中でもがいた時,川底や岩にぶつかってあちこちに擦り傷が出来ていた。

 

 

「掠り傷やから平気。だからそんな顔せんとって。ね?」

 

 

トキは表情を曇らせたままだった。

 

 

「おばちゃん,後でお粥食べたい。」

 

 

三津は鼻を啜りながら,へへっと笑った。

 

 

『精一杯甘えたら安心してくれるやろか?』

 

 

「はいはい,そしたら大人しく寝てなさい。」

 

 

慈しむように頭を撫でてからトキは部屋を出た。

 

 

……吉田さんは大丈夫かな?』

 

 

自分はバッチリ風邪を引いた。だったら同じ様になった彼も少なからず体調を崩してるかもしれない。

 

 

『あれで風邪引いてなかったら吉田さんって……馬鹿……。』

 

 

思わずふっと吹き出した。

もし自分が何ともなくて,吉田だけ高熱なんか出していたら。

 

 

『後でやっぱり三津は馬鹿だねって言ったやろな。

でも土方さんなら,それぐらいで風邪引きやがって,鍛え方が悪いっ!って言わはるやろな。』

 

 

土方の言い方も表情も,鮮明に思い出されるし,真似だって出来る自信がある。

 

 

『でも,もう屯所に戻る事はないんやな。みんなと一緒に過ごす事はないんや……。』

 

 

 

 

 

「ほら見なさい。無茶するからだ。」

 

 

「別にこれぐらいどうって事ありません。」

 

 

吉田が横たわる布団の脇に桂が正座をして見下ろしていた。

 

 

「玄瑞に薬を作らせている。後で飲みなさい。」

 

 

「そんな物飲まずとも,寝れば治ります。寝たいので一人にしてもらえませんか?」

 

 

心配してくれてるのは分かるけど,吉田にとっちゃ有り難迷惑だった。

何とか桂を追い出して,ほっと息をついた。

 

 

『ありゃ三津を心配してる目だったな。

三津も同じ様になってるなんて考えて見てたんだろうな。』

 

 

「あーあ,動けなきゃ三津に会いに行けないじゃないか。」

 

 

ガンガンと頭をかち割るような痛みに耐えながら目を閉じた。

 

 

『助けてやったんだし,それなりにお礼はしてもらわなきゃね。

謹慎なんて誰が守るもんか。』吉田がうとうとしている所に二つの足音が聞こえてきた。

 

 

「入るぞ。」

 

 

「もう入ってるだろ。」

 

 

吉田が許可する前に,久坂と入江が障子を開いて中へ踏み込んで来た。

 

 

「心配してやってんだ。」

 

 

言葉は端的だが,その中には入江の温かさがある。それを知ってるから,吉田は何だかこそばゆい感じがした。

 

 

「そりゃどうも。」

 

 

その気恥ずかしさから,右手を顔に被せた。

 

 

「お前が逃がしたあの娘,以前会った事があるな。」

 

 

久坂の言葉を聞いて吉田は指の隙間から目を覗かせた。

 

 

「上から見下ろされるのは好かん。」

 

 

長身の久坂は胡座をかいても横たわる吉田に威圧感を与えた。

 

 

「以前連れてたろう?」

 

 

「何処で会ったかも覚えてるか?」

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