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domoto63

「ねぇ、私今、

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「ねぇ、私今、

「ねぇ、私今、すごいブスだよね?顔、ヤバくない?」

 

「あぁ、確かに凄い顔してるね」

 

「もう、こんな道端でプロポーズなんてするから……!」

 

私はそこで我に返った。

そうだ、すっかり忘れていたけれど、學phonics ここは家でもなければ二人きりの密室の空間でもない。

誰もが通る、道端なのだ。

 

辺りを見回すと、結構な人が歩いていることに気付き、恥ずかしさが再度込み上げてきた。

しかも、どことなく視線を浴びている気がするのは、きっと気のせいなんかじゃない。

 

昼間から外でキスしてしまった。

思いっきり抱きついてしまった。

人前でイチャイチャするほど見苦しいものなんてないと思っていたのに。

 

「今、言いたいと思ったんだよ。ダメだった?」

 

……ダメじゃない」

 

見苦しくてもいい。

さすがに、このときばかりはそう思えてしまった。

 

「とりあえず、帰ろうか。話の続きは、帰ってからゆっくりしよう」

 

「そうね」

 

時間なら、たっぷりある。

ゆっくり、自分たちのペースで話し合い、二人寄り添いながら前に向かって進んでいけばいい。

 

これから先の人生、きっと思いがけないことが沢山起きるだろう。

嬉しいことや楽しいことばかりではない。

悲しいことや、苦しいことだって同じくらいある。

 

それでも私はこの先もずっと、幸せだと呟き笑っているだろう。

 

私の全てを受け入れてくれたあなたが、私のそばにいる限り。

あなたの全てを愛してやまない私が、あなたのそばにいる限り。

 

この恋は、永遠だと信じている。クリスマス。

365日の中で、その日を特別な一日だと位置付けている人は、どれくらいいるのだろう。何も意識せず、通常送る日々と同じように過ごす人ももちろん多いだろう。けれど、私にとっては違う。確実に、この日は大きな意味を持っているのだ。

 

「ねぇ、悠里。今年のイブはどんな風に過ごす?あと二週間だよ」

 

「そっか、もうそんな時期か。去年は俺の家で過ごしたもんな」

 

 甲斐悠里。この世で最も大切な存在である、私の夫。彼の生まれた日が、クリスマスイブなのだ。昨年のイブは、彼がひとりで暮らす家に愛犬のもずくも連れて行き、初めて一緒に過ごした。外で食べるような贅沢な食事は作れなかったけれど、彼は満足そうに笑い、私も至福の時間を過ごすことが出来たと思っている。

 

「今年はどこかで外食して、定番のイルミネーションでも見に行く?」

 

「それもいいよな。かなりベタだけど、楽しそう」

 

 恋人関係ではなく、夫婦という関係になってからも、互いが生まれた日くらいは一緒に祝い、誰よりもそばで過ごしたい。この先も変わらずにいられたらいいと心から思っている。

 

「ちょっと店探してみるか」

 

 日曜日の昼間。録りためた映画を見ながら、二人並んでリビングのソファーにもたれる。膝の上で眠る愛犬を撫でながら、コーヒーを飲み会話をする。こんな何気ない時間が、とても幸せだと感じる。

 

「私も今、検索してみるね」

 

 二人でスマホを駆使しながら、クリスマスに過ごす店を検索していると、彼のスマホがピロンと音を鳴らした。

 

「あ、山崎さんからメッセージだ」

 

「山崎さん?」

 

「俺が前に住んでた家の近くにあった居酒屋で知り合った人。俺より五つ年上の、凄い性格いい男でさ。へぇ、山崎さん結婚したんだって。いつもの居酒屋で結婚パーティーするから来てくれないかって」

 

「それはおめでたいね。お祝いで駆け付けてあげないと」

 

 彼は社交的な性格のため、友人がとても多い。限られた友人としか連絡を取っていない私とは大違いだ。彼の交友関係を全て把握する事は、恐らく無理だろう。でも、それでいいと思っている。結婚してから、自分の心に余裕が生まれたのだろうか。出来る限り、束縛はしたくないと思えるようになったのだ。

 

「あー……でも、無理だな」

 

「え、どうして?」

 

「パーティー、イブの夜にするんだって」

 

「え……

 

 その日は当然のように二人で過ごすつもりでいた私は、わかりやすく狼狽えてしまった。

すると彼はそんな私に気付いたのか、優しく微笑み私の頭を撫でた。

 

「そんな顔するなって。行かないから」

 

「でも……

 

「クリスマスは、依織と二人で過ごしたいんだよ」

 

 そう言って彼は、山崎さんに断りのメッセージを送信してくれた。するとその数分後、再度彼のスマホが鳴った。どうやら山崎さんから電話の着信のようだ。

 

「あ、電話だ。ちょっと出るわ」

 

 電話の奥の山崎さんの声が、甲斐の隣にいる私の耳にも届く。

 

「結婚おめでとうございます。で、相手は?え?マジで?やっぱ俺、お似合いだと思ってたんですよね。いや、お祝いには行きたいんですけど、その日は俺も奥さんと二人で過ごす予定なんで。別の日にお祝いさせてもらってもいいですか。……え、いや、それはちょっと……

 

 甲斐が気まずそうに、隣にいる私に視線を合わせた。どうしたのだろう。

 

「だから別の日にちゃんとお祝いしますから……って、電話切れた」

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